環境への影響が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)の焼却試験から、分解処理に関する科学的知見を創出【研究部/先端理工学部】
2025.02.14
理工学研究科の院生を筆頭著者として、研究成果を国際科学雑誌「Chemosphere」に発表
龍谷大学大学院理工学研究科の村上太一さん(修士課程2年)を筆頭著者として、本学先端理工学部卒業生の斎藤直也さん、国立環境研究所の松神秀徳主幹研究員、京都大学大学院工学研究科の高岡昌輝教授、本学先端理工学部の藤森崇教授からなる共同研究チームは、近年環境中での汚染問題が懸念されている有機フッ素化合物(PFAS)の中でも規制が進んでいるペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)に対し焼却試験を行い、結果として精密な分解率や温度依存的な副生成物の発生挙動を明らかにしました。
同研究成果を国際科学雑誌「Chemosphere」(Elsevier社)において公表しました。
【発表論文】 英 題:Destruction of Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctadecanoic Acid (PFOcDA) by Incineration: Analysis of the By-Products and Their Characteristics 和 題:焼却によるペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)の分解: 副生成物の分析とその特性 著者:村上太一1、斎藤直也1、松神秀徳2、高岡昌輝3、藤森崇1(責任著者) 所属:1. 龍谷大学先端理工学部・理工学研究科、2. 国立環境研究所、3. 京都大学大学院工学研究科 掲載誌:国際科学雑誌「Chemosphere」Volume 373(Elsevier社) DOI:https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2025.144165 ※オンライン掲載:2025年1月29日 研究支援:(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費(JPMEERF20213002) |
【ポイント】
・有機フッ素化合物(PFAS)は、近年、環境中での残留性やヒトを含む生態系への影響
が懸念されている化学物質として国内外で規制の動きが強まっている。
・焼却試験により、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン
酸(PFOcDA)は850℃以上で、国際条約等で求められる高い分解率(99.999%超)
を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大
した。
・副生成物には炭素数が少なくなった化合物やエーテル結合を含む化合物がみられた。
特に、副生成する短鎖の有機フッ素化合物は、気相中へ移行し環境中へ排出される
可能性が示唆された。

【償却試験に関するイメージ】


今回の研究成果に関して、筆頭著者の村上太一さん(本学理工学研究科 修士課程2年)と、藤森 崇教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程)のコメントを紹介します。

ふと目にしたニュースでPFASによる環境汚染が身近な地域にも影響を及ぼしていることを知り、他人事ではないと感じたことがきっかけで本研究テーマに関心を持ちました。この研究成果がPFAS問題の解決や今後の研究の一助となることを願っています。

「燃やせば分解出来て当たり前」と一見簡単に思えるテーマですが、ラボスケールの実験デザイン、分解率の厳密な定量、PFASの挙動解析など、ひとつずつ丁寧にクリアした結果得られた成果です。学部時代から一貫して研究を進めてくれた村上さんと卒業した斎藤さんの努力の賜物です。
【⇒藤森教授インタビュー記事(Academic Doors)】